テントマットを探していると必ず目にするのが「R値」という数値。
実際に使ってみるとR値だけを信じて購入していいのか?という疑問がわいてきたので、先ずは各メーカーが推奨するR値と対応温度について、次に私が実際に使っている温度帯を比較してR値だけで選ぶのが正解なのかどうかを考えてみたいと思います。
スリーピングマットのR値とは?

R値の意味
R値は「Thermal resistance value」の略で、日本語にするとサーマル(熱)レジスタンス(抵抗)バリュー(値)
、「熱抵抗値」という意味です。
そのマットがどれだけ熱に対する抵抗力を持っているかを表す数値で、数値が高いほど熱に対する抵抗力が高くシュラフの下に引いた時に背中からの底冷えをシャットアウトしてくれるという事になります。
登山用のテントマットの場合、R値1~7くらいまで。
メーカーが推奨するR値と対応温度
サーマレスト、エクスペド、シートゥーサミットなど代表的なテントマットメーカーのサイトなどを調べると、R値によって以下のような区分での使用が推奨されています。
サーマレスト

R値(0~2.0) :夏場向け
R値(2.0~4.0) :春~秋の3シーズン用
R値(4.0~6.0) :オールシーズン用、冬期・積雪期用
R値(6.0~) :エクストリーム・高所・極地用
エクスペド
エクスペドのサイトから抜粋。(エクスペド公式)
R値 | 対応温度 | R値 | 対応温度 | R値 | 対応温度 |
1 | 10℃ | 4 | -11℃ | 7 | -32℃ |
2 | 3℃ | 5 | -18℃ | 8 | -39℃ |
3 | -4℃ | 6 | -25℃ | 8.9 | -45℃ |
シートゥーサミット

3社のR値の対応温度帯を見ると、サーマレストではR値4~6がオールシーズン用、エクスペドではR値6で-25℃まで対応となっていますので、日本の雪山ではR値6のスリーピングマット1枚あれば厳冬期まで対応できるということになります。
2020年に作られたR値の新しい測定規格
実はこのR値、今まではスリーピングマットメーカー各社が独自に測定を行っていたのですが、2019年に「ASTM F3340-18」という共通の測定基準が策定され、今まで各社バラバラだったR値の基準が統一されました。
これにより2020年から各社のパッケージに「ASTM✓」のマークが記載されています。

※ASTMとは、ASTMインターナショナルという世界最大の民間非営利の国際標準規格設定機関のこと。
サーマレスト、ニーモ、シートゥーサミット、エクスペド、ビッグアグネス
などのメーカーは2020年の時点で、スリーピングマットのR値を測るのに新基準「ASTM F3340-18」を採用しています。日本のモンベルやイスカなどはまだ採用していないようです。
新しい規格でR値がUP!?
私自身も最近知ってびっくりしたのですが、この新しい統一基準によって各社から販売されているスリーピングマットのR値が変更されました。
もちろん商品自体に変更はなく、ただ単にR値だけが新基準の測定方法に沿ったものに変更されています。
こちらのサイトに主要なマットの新R値が掲載されています。
参考サイト:sectionhiker
特にサーマレストのネオエアーシリーズ、中でもネオエアーXライト、Xサーモは大幅にR値がアップしています。

逆にリッジレストやZライトソルなどクローズドセル系のマットはR値が下がっています。
実際に使ってみてどうなのか?
ここまでは、あくまでメーカーの推奨値でR値と対応温度を見て来ましたが、実際に私がいくつかのマットを使ってみた感想も参考に書いてみます。
寒さの感じ方は人によってかなり差があるので、ハッキリとこのくらいなら大丈夫!というのが難しいところですが、私自身まわりの山仲間に比べると寒がりなほうで厳冬期用のシュラフはモンベル♯0、マットはエクスペドのR値7のダウンマットを使っています。
軽さより暖かさを重視して選ぶくらい、寒さには弱いやつだと思って参考にしてください。
メーカー推奨値と実際に使える気温

各マットのR値と持って行くマットを選ぶ時に基準にしている気温
今まで実際に使った事のあるサーマレストのマットを例に、各メーカーの新旧R値、それに対応する気温、私の経験値の中でテント泊時に下からの冷えを感じることなく寝る事が出来る気温、を表にまとめました。
旧R値 | 旧対応温度 | 新R値 | 新対応温度 | 実際に使える温度(私見による) | 温度差 | |
Zライトソル | 2.6 | 0℃ | 2.0 | 3℃ | 10℃以上 | 7℃ |
ウーバーライト | 2.0 | 3℃ | 2.3 | 2℃ | 10℃以上 | 8℃ |
Xライト | 3.2 | -5℃ | 4.2 | -12℃ | 5℃以上 | 17℃ |
Xサーモ | 5.7 | -22℃ | 6.9 | -31℃ | -10℃以上 | 21℃ |
ダウンマットHLWM | 7.0 | -32℃ | 7.0 | -32℃ | -20℃以上 | 12℃ |
表からわかるように、概ねメーカー推奨値に+10℃位が底冷えを感じずに寝れる温度だと私は感じています。
この辺りは、人によってはメーカー推奨値+5℃までとか、メーカー推奨値-5℃まで大丈夫とか個人差があると思います。
また、XライトとXサーモにおいては20℃近くメーカ推奨温度との差がありますが旧R値で比較するとやはり+10℃程度に収まります。
サーマレストの旧R値は断熱性能よりも実際に使える温度帯に合わせた設定になっていたのでは?と考えらますが、あくまで推測です。
まとめ
このようにそのままの新R値だけを信用してしまうと寒い思いをする可能性があります。
確かめ方は、比較的安いZライトソルを買ってどこまで耐えられるかを試してみて、0℃位まで耐えられれば厳冬期用のマットもR値通りに、10℃が限界であれば厳冬期用のマットもR値をUPするというのも一つの方法です。
いずれにしても統一の評価方法が確立されたことで、他メーカー同士のマットも比べ安くなり、購入者としては更に比較検討しやすくなったとお思います。
最後に私が実際に使っているスリーピングマットの紹介&レビュー記事です。